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(6月3日)
 私達3人がスタジオに着くと、ビルとデビッドはFIX(手直し)をやっていた。10時を回る頃にはジーンもやって来て残りの4曲にトライだ。
 始めようとした時に、見覚えのある男の人がやってきた。誰やったかいな?由美の方を見ると彼女がニヤニヤしている。あっ!そう、そうだ。ステュアート・ダンカンだ。ワァオー!やっぱりナッシュビルだ。子供をデイケアーに送った帰りに、立ち寄ったとのこと。

 ちょっと話はそれるが、買い物に出ればジェイソン・カーターやリッキー・シンプキンスに会うし、タワー・レコードではマット・マウチ、日本食レストランではあのジョン・コーワンに、しかも皆んな気軽に声をかけてくれる。ナッシュビルはそんな街だ。

 話は戻って、デビッドが夕方からギターの修理のため、ノース・キャロライナへ行かなければならない(その後はスティーブ・カウフマンのギター・キャンプ)というので、早々とFIXを終えた。

ジーン・リベア


 この時期は、プロのミュージシャンにとっては稼ぎ時で、スケジュールがいっぱいなのだ。「6月はナッシュビルに2日間しか居ない」と言っていたので、彼はその2日間を、私達のために費やしてくれたのだから感謝、感謝。



 今日のランチは、日本食レストラン“新富”だ。皆んなお寿司が好物らしい。ジーンはお寿司の上にわさびをドバッとのせて、平気な顔をして食べている(アメリカ人、いや外国人はそうする人が多い)。

 スタジオに戻り、ギターなしで最後の曲“Across The Pacific”を録音。この曲は美雅姉の4曲目のオリジナル曲だ。時間をかけて充分に練って作った曲。「いい曲を書いたね」と皆んなに喜ばれ、特にジーンは「ステュアート・ダンカンと2人でやるんだ」と言って、カセットに吹き込んでいた。5時に終わったので、「もしベースのミスを見つけたら電話して、すぐに飛んでくるから」と言い残してジーンは帰った。とてもフレンドリーな人だ。

ローランド・ホワイト



 さぁ、次は私達のFIXの番だ。タバコを吸いに外へ出たビルが「ちょっとおいで」と手招きしている。外へ出ると、空模様が変だ。スピルバーグの映画「ツイスター」で日本でも知られるようになったトーネードだ。雨が降り出して、雷も鳴り出した。ビルが「中断だ!もし雷電でもしたら、今までの苦労が水の泡だ!」と言うので、近くのファースト・フードの店で腹ごしらえ。ラジオからは「トーネードに注意するように」とのアナウンスがひっきりなしに聞こえてくる。

 スタジオに戻ると、さっき連絡していたローランドが車の中で待っていた。早速“Weeping Willow Tree”の音合わせを始める。最初の間奏をマンドリンでハモるのだけど、同じランディ・ウッド製のマンドリンなので、ものすごく響いて、自分のトレモロがとても気持ち良く聞こえる。彼のランディ・ウッドは2作目だそうな。その1作目の持ち主は、私のピッキング・フレンド、クリス・ヘンリーのお父さんだった。

 雨もようやく止み、早速レコーディングに入る。ローランドが加わったハーモニーもバッチリ決まってスムーズに出来た。「今日は何もすることがなっかったんだ」とすぐに駆け付けてくれたローランドには、美雅姉が初めてナッシュビルに住み始めた1昨年以来、大変お世話になっていて、ステーション・インでは、時々、奥さんのダイアンらとも一緒に演奏している。いつも優しいローランドにも感謝、感謝だ。

 時計の針が10時を回ったところで、一通りのレコーディングを終えた。明日からまたいつもの通り、学校だ。

(6月10日)
 今日はあのジェリー・ダグラスとのレコーディング。ちょっと胸を弾ませながら彼を待った。10時過ぎに驚いたような顔をして入ってきた。「今日はビルだけかと思って髭を剃ってないんだ。もし3人が来ると聞いていたら、ドレスアップしたのに。ゴメンネ」と言いながら、すぐにドブロの弦を張り替えてスタンバイ。

ジェリー・ダグラス



 “Separate Times”“Time Flies”“Amazing Grace”の3曲。ドブロが入るとまた違った感じだ。どのブレイクも私には完璧に聞こえるのに、ジェリーは何回もやり直していた。

 「雑誌で日本のドブロ・プレイヤーの記事を読んで驚いたよ。彼はコンピューター・ゲームのソフトを作っているんだ。彼を知っているかい?」おそらく高橋名人のことだろう。「彼は億万長者に違いないネ」、さらに「ベラ・フレックとは隣同士さぁ」等々と、彼のことも一喋りした後、マーク・オコーナーとフィドル・キャンプへと直行した。

 FIXを続けていると、今度は“アコースティック・ミュージシャン”誌の出版と“ブルーグラス・カナダ”誌の編集をやっているジム・ジェソンというカナディアンがやってきた。彼が手にしているその6月号には、私達の1st CDの記事の紹介記事が掲載されており、それをわざわざ届けに来てくれたのだった。ありがたいことです。

 お昼は、例のメキシカン・フード。「歌う前には決してチーズやミルクを口にしてはダメ(歌っている最中に喉が乾くから)だよ」食べながらビルがいろんな事を教えてくれた。他にもボイス・トレーニングや英語の発音の仕方も。そのアドバイスを取り入れて11時までFIXを続けた。

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