子たちより親が
 四女、美砂は身体よりもギター(マーチンD-28)が大きくて左手がローポジションまで届きません。私が使っていたバンジョー(ギブソンRB-800)も5年生の美雅には大き過ぎて、それに大人でも肩が凝るくらいの重さです。子供用の楽器は売っていませんので、中古専門の楽器店や質流れバーゲンの会場を探して回り、ギターは小さいのを、バンジョーは軽いの(ピアレス)を購入しました。

 次は練習する曲を決めるのですが、みんな知っていて、歌えて、演奏しやすい曲がベストです。リード・ボーカルがまだ2年生ですから日本語で歌える曲でなければなりません。そこで子たちが使っている音楽の教科書から“赤い河の谷間”と言うカウボーイ・ソングをまず1曲目に選びました。

 まずリードボーカルの声に合わせてキーを決めなければなりませんが、始めはバンジョーが弾きやすいように、またギターがFのコードを弾かなくていいようにと、ちょっときついかなぁと思いましたが、Gにしました。バンジョーにはTABを書いてやり、マンドリンにはコードとそのカッティングを、ギターにもコードを手取り足取りで教えました。バイオリンはまだ購入してませんので由美はハーモニーの練習から始めました。
 
 その由美はバイオリン教室に通わせました。これだけは私にも教えることが出来ないし、基礎を学んでいないと弾けないからです。自宅近くの病院のお嬢さんで、ドイツへ留学されるまでの間、バイオリンの基本的な弾き方など教えて頂きました。しかし最初の2ヶ月は楽譜の読み方だけでしたのであとの3人も一緒に習い、後でたいへん役にたちました。絵美はそれまで続けていたピアノ教室も継続して通いました。

カウボーイ

カウボーイのつもり。


毎日の練習
 さっそく来年の『太宰府ブルーグラス・フェスティバル』に向けての練習を始めました。歌だけではなく、楽器を持って自分達で演奏しながら歌うのです。大人でも長続きせぬのを始めようとしているのです。しかしみんな頑張ると約束しました。ワクワクしているのは子たちだけではありません。私も仕事が手に付かぬくらい興奮していました。自分のこどもがバンドを組んでブルーグラスを演奏すると思うと...。それから毎日の練習を見てやるのが最高の楽しみとなりました。 

 子たち専用のカセットテープに、レパートリーにできるような曲をピックアップして、毎日聞かせました。英語の曲も耳から自然に入るように、まさに習うより慣れろです。移動する車の中でも、食事中でもいつでもブルーグラスを流しました。

 毎日、学校から帰って30分の個人練習、夜8時から9時までが全員揃っての合同練習。また日曜祭日の午前中は11時から12時まで、午後は3時から4時まで、夜はいつもの通り8時から9時まで。とスケジュールを決めて練習しました。ステージで演奏するには5曲はマスターしなければなりません。期間は1年間しかないのです。

 しかし日が経つにつれて案の定、練習をしない子が出てきました。思うように弾けないのとテレビが原因です。そこで子たちが帰宅する頃に自宅に戻り、練習を見てやりました。もちろん仕事をサボッてのことです。こうやって毎日の練習が当たり前のように、毎日の生活の中に溶け込んで行きました。

グッタイムチャーリーにて チャーリー永谷さんが経営する「グッタイム・チャーリー」にて
熊本ブルーグラス愛好会のクリスマスの集い。

 「お父さん、あした友だちと遊びたいです」と一人がお願いすると、あとの3人もなるべくその日に合わせて、友だちと遊ぶようにしました。

 私も仕事上のおつき合いを昼間のゴルフだけにして、夜の中洲はなるべく断るようにしました。綺麗なおねえさん相手よりも、夜8時からの子たちの練習をみてやる方が楽しかったからでした。

 ところが私が夜の中洲に行くのを子たちは待ち望んでいたのでした。何故ならふだんは見たくても見れないテレビ番組が見れるし、ドーナツやお寿司等のおみやげがあるからでした。


TAB:タブラチャア(Tablature)、タブまたはタブ譜という。通常の楽譜の符号の代わりに数字で弾く弦と位置を表示した楽譜。

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